動物病院就活Lab(ラボ)

目次

1.インターン先の見つけ方

 「インターンに行こう」と思い立ったら、まずはインターン先を探すことが第一歩になります。でも、何の情報もない中で、国内に約17,000件ある動物病院の中から、自分にあった病院を見つけるのは難しいものです。まずはその探し方を解説します。

「場所」で考える

動物病院の「場所」の選択肢としては、「地元」「都会」「地方」に分類されます。
「地元」を選ぶ方の大半は、実家から通うことを前提としています。
「都会」の場合は利便性が大きな武器です。
「地方」の場合は「伸び伸びとした環境で働けるかも。」という思いからかもしれません。
「自分の性格や気質などからまず何処で働きたいか」を考えることが重要なものになります。
 
「都会」「地方」の選択肢の次は地域を絞り込みます。「関東」「東海」「関西」などの選択をすると良いでしょう。あくまで情報を得る為の選択なので、自分の勝手なイメージで選んで構いません。

「何をしたいか?」で考える

「自分が将来、どんな獣医師になりたいか?」に着目して考えます。
「専門性が持ちたい」「色々な診療科目を診察できるようになりたい」「大動物などもみてみたい」など様々です。
仮に希望する「場所」が定まっていなくても、自分のやりたい事がある程度決まっていればそちらを優先するのもアリです。病院の規模や専門性もおのずと決まってくるので、検索サイトでの病院検索もある程度容易になります。
 
ネット検索でヒットした病院だけを見て「ココしかない!」とすぐに決めてしまうことには注意してください。

先輩に聞いてみる

「したい事も行きたい場所もまだ決まってない」という学生さんも多いです。
そんな方は、先輩などに実際にインターンで行った先をズバリ聞いてみるのも手です。
 
実際にインターンを体験した先輩の意見はリアルです。「インターンしやすかった」と言われる病院にまず行ってみましょう。その病院に行ってみて、感じた内容から「じゃあ何を基準に選ぶか」が見つかるでしょう。

2.予約を取ってみよう

現在はDMで連絡するのが一般的に

なんとなくインターンに行きたい病院が見つかったら、インターンの予約を取りましょう。
 
現在では、予約の取り方としてHPやInstagramなどからDMを送ることが一般化しています。ひと昔前は電話での連絡が多かったですが、診療中の病院に電話を掛けると診察の迷惑になる場合があります。
 
また、診療の合間(お昼休みなど)に電話すると留守番電話や繋がらない可能性が高いです。そのため、現在は24時間受付可能なネット上での連絡手段が一般的です。就職用のLINEアカウントを持っている病院もありますのでそちらで連絡を取るのもスムーズでしょう。
 
また、就職説明会の会場ですぐに予約してしまうのも一手です。

予約時にお伝えすること

病院にインターンの予約を取る際は下記内容を伝えると話がスムーズです。

・学校名、学科、学年、名前
・インターンの日程候補日
・病院までの交通手段や宿泊予定場所
・どのような内容のインターンを希望するか

日程に関しては、第3候補くらいまで提示しましょう。
期間については、1病院につき、2〜3日を目安にすると良いでしょう。1日だけだと、見学できる範囲が狭くなります。
 
また、その日の診察状況や働いているスタッフによって、極端な内容のインターンになってしまうことがあります。スタッフの多い病院ほど、何日か見学しないと「いつもの病院」を見ることは難しいものです。実際に就職した際、「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、複数日インターンに行くことが重要になります。

交通手段や宿泊先も気をつけて!

郊外になればなるほど、交通手段は乏しくなります。
「歩けるから大丈夫」とか「公共交通機関もあるし大丈夫」などと思い込みには要注意!歩いたら意外に遠かった、アップダウンが激しい、交通機関はあるが30分に1本、帰るのに1時間待ち。なんてコトもザラにあります。
 
また、病院まで自家用車で行く場合にも注意点があります。駐車場の有無や停める位置の指定などがありますので、事前にしっかりと聞いておきましょう。予約から好印象を持っていただくことは重要です。インターンはもちろん、就職につなげるには心配りが大切です。
 
病院のお客様はあくまで飼い主様であり、動物たちです。「病院のお客様に如何に迷惑をかけないように配慮できるか?」が好印象のカギです。
その為に「いつでも見る事のできるメールなどで連絡する」「なるべくやり取りは回数を減らす」「お客様に配慮している姿勢を見せる」を心掛けて予約を取りましょう。

3.インターンに行ってみよう

病院を選び、予約をしたら後は実際に行くだけ!でも、実習で何を見て、学ぶかは事前に知っておくことが重要です。

まずは慣れることが最優先

まだ就職まで時間のある1-4年生や、インターン経験が少ない学生(1〜3回程度)は、まずは病院という場所に慣れましょう!
 
性格も分らない、見ず知らずの学生に対していきなり診察補助を任せることは、病院にとってリスクです。
 
ましてや、まだ知識も少なく場馴れもしていない学生には任せることは難しいものです。初めての場所で緊張もあるでしょう。緊張がほぐれるまでは「見る」に徹するとよいでしょう。

病院の雰囲気を見ることが大切

インターンでまず感じていただきたいのは、「病院の雰囲気」。
「明るい」「暗い」、「ほのぼの」「さつばつ」、「てきぱき」「もたもた」などなど、どんな雰囲気でスタッフが働いているかを見ましょう。
いきなり、その病院で将来働くイメージは持ちづらいものです。まずは「病院ってこんなトコロなんだぁ」くらいで大丈夫です。

5年生以上、もしくはインターンに慣れてきたら

そろそろ自分がどんな病院で働きたいか、何となくイメージが湧き始める時期です。
この頃になると、インターンに行く病院の傾向も似てくる傾向にあります。
 
このステージで見ておきたいのは「今までの病院との差」。すべてが自分に理想的な病院に巡り合う可能性は極めて低いものです。その中で自分が妥協できないこと(例えば「教育体制」や「休み」など)を前の病院を比較し、どちらの病院の方が自分に合っているかを考え、就職先を絞り込んでいくと良いでしょう。
 
この段階では、就職説明会やホームページで書いてある内容が合っているかを確認する必要があります。そのためにもインターン先のスタッフと上手くコミュニケーションを取り、「本当のところ」を聞き出しましょう。良好なコミュニケーションを築くためには、「挨拶をする」「積極的に手伝う」「質問する」ことが大切。「話しやすい子だな」「頑張っているな」という印象を持っていただきましょう。誰でも、話したことの無いよく分からない相手に突っ込んだ話はしてくれません。如何に多くのスタッフと話を出来るかが自分の知りたい情報を得るカギになります。
 
また、良い印象を持っていただくことで、就職した際にもメリットが。仲間として、後輩として、良好な関係性を早期に確立できることも期待できます。

6年生もしくはインターン経験10回以上になったら

希望する病院も3〜4つ程度に絞られているでしょう。この檀家で見るべきは「待遇」「スタッフ間の連携」の2つ。
 
待遇とは給与面や福利厚生などを指します。給与は基本給とその他の手当、残業代、交通費等です。自分のなりたい夢や希望を叶えることと、生きていくためにお金を稼ぐことの両方を実現することが大切です。自分のスキルが上がっていった時にどう評価してもらえるかも大切。評価の報いが給料アップなのか、別の何かなのか。聞きづらいことかもしれませんが、聞いておかないと「最初は良かったけど…」という後悔が生まれます。
5年生までの間に待遇について聞いていても、1年で給与体系がかなり変わる可能性があるので要注意。実際に、最低賃金や労働法規などは毎年変わっています。そのため、賃金等の待遇面は就職する1年以内の最新情報を把握しておくことが大切です。
 
スタッフ間の連携度合いを確認するにはコツがあります。「患者さんの診察室への呼び込み」「問診内容」「診察時間」「処方」「調剤」「会計」の一連の流れを見ると良いでしょう。将来自分が働く場合、その病院の雰囲気やり方で診察をすることになります。もし自分がその輪の中に入ったらどうなるのか?をシミュレーションしながら動きを見ると良いでしょう。
 
今までの実習でもある程度見てきている事ですが、見るというより、体感する様な実習を心掛けるとよいと思います。病院によってこの流れは異なります。自分の仕事をする上での性格を考え、自分の性格と病院の個性がマッチするのかを確認してください。

4.内定をもらおう

動物病院の就活における「インターン」とは、他の企業とは少し異なります。一般的な企業に伺うインターンは、「職場体験」や「仕事の理解」を目的としたものです、これに対し、動物病院におけるインターンの目的は「就職内定をいただくための行為」と考えるのが妥当です。最後におさらいを含めて、どのように動くべきかを考えましょう。

4年生頃から考え始めるのがベスト

インターンを考え始める時期ですが、おススメは4年生頃からです。
インターン活動が活発になる時期は、春休み、ゴールデンウィーク、夏休み、冬休みの4つです。
 
数多くある病院の中から選んで、実際に行くことには結構な時間と労力がかかります。なるべく早い段階で候補までは決めた方が後々楽ですし、選択肢の修正が利きやすくなります。
 
そのため、おススメのスケジュールとしては

学年 時期 すべきこと
4年生 春〜夏 情報を集め、候補を10病院程度絞る
夏〜冬 3〜5箇所にインターンに行く
5年生 春〜夏 4年生までに行っていない病院2〜3箇所行く。もしくは行って良かった病院2〜3箇所に行く。
冬〜来春 良かった病院1-2に行きここで就職先を決め、内定をもらう
6年生 春〜夏 もし第1候補の病院で内定をもらえなかった場合、第2・3の候補病院に行き内定をもらう(軌道修正)

売り手市場でも、第一志望に行ける保証はない

現在、動物病院業界の就活は売り手市場ではあります。
しかしながら、第1候補の病院に就職できるとは限りません。
 
中には、病院の経営戦略などの影響で中途採用はするが、新卒採用を見送るケースもあります。インターン中にその様な話が聞ける場合もありますが、中長期的な経営戦略を立てている病院はまだ少ないのが現実です。
 
「その年の事はその年になってから」という病院が多いので、方針が決まる年初の内にアプローチを掛けるとよいでしょう。

早い者勝ち!もありえる

実は正式なエントリー期間を設けている病院は少ないのが現状です。
そのため、「早い者勝ち」という傾向は否定できません。
 
①顔を覚えてもらう、②好印象を残す、③就職の意思を見せる、の3Stepを早い段階で実行するかは極めて重要です。
 
このような観点からも、候補の病院には複数回インターンに行くとよいでしょう。

好印象を与えるコツ

インターンの歩き方3の段階では、「やる気のある学生」を印象付けることまでで十分でした。しかし、第1志望先で内定を勝ち取るには、更に「一緒に働いて欲しい!」という印象をプラスする必要があります。では、一緒に働きたい人と言うのはどんな人でしょうか。
インターン先の病院を選ぶのはみなさん自身です。そのため、自分に合いそうな病院を見つけているのは当然と言えます。一方で、インターン先の方からしたら、インターン生がその病院に合う人材であるかは簡単に見抜けません。実は、インターンに来ている学生の印象は薄いものです。インターンで1〜2回行っただけでは、名前と外見を少し覚えてもらえる程度、と心得ましょう。
そこで重要になってくるのは、ズバリ「コミュニケーション能力」です。これは、単におしゃべりが上手、という意味ではありません。インターン先のスタッフは、例え6年生の型であっても「戦力として見ていない」のが当たり前です。そのため、「これ知ってます!」「これ出来ます!」とプロにアピールしても、印象が良くすることは難しいです。それよりも大切な姿勢は、「何をしたらよいですか?」のマインド。素直に聞いて、一生懸命にこなすことが、インターン生として大切です。指示されたことができた場合には、「これやっても良いですか?」と申し出て、やる気をみせることがベストでしょう。「報・連・相」ができる、自分の知識で突っ走らず、協調性がある、と感じてもらえれば、「一緒に働いてみたい」と思ってもらえるでしょう。獣医師、看護師のどちらか一方にだけにウケが良くてもダメです。就職してからのことを考えれば、ここはあえて「八方美人になる」ということも大切。多くの人に話しか、多くの仕事を経験することで、印象が残ります。診察中や休憩中なども含めて、こちらから質問や世間話をしていき「仕事を一緒にしてもらえる」体制を整えましょう。

見学だけのインターン先ではどうするの?

インターン先の病院の中には、見学しかさせてくれない先もあります。
そんな時に好印象を残す必殺技が「清掃」です。
あくまで相手次第ですが、積極的に自分から提案して良いと思います。
 
清掃に限らず、「自分の動ける範囲で仕事を探し、申し出る」ことで、好印象を与えましょう。
 
なるべく多くの人と関わり、相手に一緒に働くイメージを持ってもらう。そうやって外堀を埋めていき、本丸の院長の評価に加点する事で内定を近づけましょう。

技術は就職してからでもOK。問題は素直さとコミュニケーション!

大半の病院は、「知識や技術は就職してから教えることが可能」と思っている反面、性格面は後で直すことが難しいと感じています。
そのため、いかに「気持ちよく仕事ができるか」を大切にしています。その点では、インターデンで素直さとコミュニケーションを全面に出すことは極めて重要になります。

動物病院の面接って?

インターン先で印象を残すことができれば、最終関門ともいえる面接です。
 
一般的な就職試験で行われる「面接」というよりも、動物病院では「面談」のイメージが近い場合が多いです。
 
世間話などを交えた中で自分の意見を伝えることが重要になります。一般的な面接の設問集に載っているようなことは、あまり話題として出てきません。
 
一般企業の採用面接と異なるのは、受け身で答えるのではなく、積極的に自分から聞くことが大切になる点です。

実際に面接で質問されることは?

面接の際に聞かれる設問数はあまり多くはありません。
大抵の場合は、「志望動機」と「将来のビジョン」が中心になっています。
 
会話の中で「なぜこの病院に就職したいか」「将来どのように動物医療に関わっていきたいか」を織り交ぜる必要があります。
一問一答ではないので流れを読みながらアピールしていく必要があります。
 
「志望動機」と「将来のビジョン」を織り交ぜなければただの世間話で終わり、印象はぱっとしないでしょう。
もし「将来のビジョン」がまだ無い場合はこの病院でどうやってそれを見つけていきたいか。という内容でもよいと思います。病院の理念に如何に共感し、どうやって病院の発展と自分の成長を促す事ができるか。そういった内容。
いわば「自分の市場価値」をアピールする事が大事になってきます。
 
面接は院長が行う場合が多いと思います。
院長職の人間というのは得てしてそういった熱い野心が好きな方が多いので、その熱量で話せると良いでしょう。逆に商売っ気を出すと引いてしまう院長もいますので、自分が就職したい先の院長の人となりもある程度考慮できると話がし易く好印象になるでしょう。

5.まとめ

インターンとはその先にある就職を前提とした活動です。
動物病院業界は終身雇用が一般的ではないので、合わなければ次の病院を探すことはある程度容易です。
しかし、社会人最初の就職先での失敗や苦い経験は、今後転職する際などのトラウマにもなりかねません。
そのため、失敗しない就職にはインターンは極めて大切なプロセスになります
 
みなさんの充実したインターン、悔いのない就職ができるよう願っております。